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夏の記憶(04) 


 森の中に一歩踏み込むと、ひんやりと涼しかった。
 さっきまで歩いてた道の上とは空気から違う気がする。
 さすがにフェンスの外と比べるとずっと暗くて、目が慣れてきたらようやく足元が見分けがつく程度だの明るさだ。それでも掃除とか手入れされているようで躓いたりすることはなく、森の中は意外に歩きやすかった。
 それでもぼくが怖がって――、怯えていなかったといえば嘘になる。
 ぼくの手は、はじめは強引に康介に握られていたのだけど、気づいたらぼくのほうから強く握り返していたからだ。少し汗ばんだ手のひらの感触が妙に熱い。康介もそれに気づいていたはずだけど、何も言わない。いつもだったら軽口を叩いて、ぼくをからかっただろう。康介もたぶん緊張しているんだ――、ぼくはそう思い、康介のことがますます近しく、頼もしく思えてくる。
 ぼくらは黙ったまま歩き続けた。
「ど、どうしたの」
 唐突に止まった康介に驚いて、ぼくは声をかけた。
「しっ。静かに」
 康介の声に、ぼくは口をつぐみ、そして耳を澄ます。
 しかし、かすかに風に木々の葉が揺れる音以外には何も聞こえない。
 きっと空耳だよ――、そう言おうとした、その刹那だ。たしかに何かが――、人の声らしきものがぼくの耳にも聞こえたのは。
 そこは何もない空間に過ぎなかったはずなのに、暗がりに濃密で不思議な存在感のようなものが凝縮していくのをぼくは感じた。そう、見えたのではなく感じたのだ、目で見るぶんには微塵ほどの変化もなかったに違いない。
「……!」
 ぼくは一歩後ずさり、無意識のうちに康介の背中に隠れるようにして様子を窺った。そして康介は、ぼくを護るように軽く手を広げて身構える。そうしてぼくらは次の変化を待ったのだ。

《続く》






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