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いつか見上げる空の色(47) 


 その叫び声と同時に頬を叩かれる衝撃で幾らか意識がはっきりしてくる。
 再び目を開くと雪の舞う暗い空を背景に、ぼくを心配そうに見ているコウさんの顔が見えた。
 コウさんの目には、いっぱい涙がたまっていた。そこから零れ落ちた涙が、ぼくの頬を濡らしていた。それは暖かくて、熱いくらいだ。それでようやく、これは夢なんかじゃない――、ぼくはそう悟ったのだ。
「なぜ……、コウさん、どうして?」
 ぼくは起き上がろうと身じろぎした。
 でも凍えきった身体は、なかなか上手く動いてくれない。
 普段なら何の苦労もいらないはずなのに、身体がギクシャクと弱々しく動くだけで起き上がろうとしてできないのだ。そんなぼくをコウさんは力強く支えてくれて、そのまま強く抱きしめてくれた。「ああ……、なんて暖かなんだろう……」
「この馬鹿野郎!」
 コウさんは怖い顔をして、ぼくを叱りつけた。「こんなにも冷たくなって――、こっちは死ぬほど心配したんだからな!」
 ぼくは黙って頷いた。
 その時、ぼくには頷くしかできなかったのだ。激しい嗚咽と涙が同時に溢れてきて、何の言葉も出てこなかったから。ぼくも言葉を口にする代わりに腕を回してコウさんを抱きしめた。
「そうだ、少し待ってろ」
 短く言って、コウさんはぼくから強引に身を離した。
 そのままどこかへ行ってしまうのではないか――、そんな不安に駆られながら、ぼくはコウさんの動きを目で追った。
 コウさんは身を離すと着ていた上着を脱ぎ捨てた。目の前で何が起きているのか、ぼくが理解する前に、その脱いだ上着をぼくに着せてくれたのだ。
 それは暖かく、懐かしい匂いがした。
「でも、コウさんが……」
 ぼくが抗議しようと弱々しく口にした途端、ぼくに向けられたコウさんの鋭い目が、それ以上の言葉を封じ込めた。
「いいから、もう何も言うな。ジュンは自分の心配だけをしていろ。分かったな、これから先、ずっとだぞ!」

《続く》






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