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いつか見上げる空の色(01) 


「ありがと」
 ぼくは小さく手を振って、街角に飲み込まれていくトラックのテールランプを見送った。遠くに見えるネオンサインこそ賑やかだけど、ぼくの回りじゃ人影は疎らで、真っ暗なビルのシルエットが聳え立ってる。ビルの谷間を吹き抜けてく風は冷たくて、ぼくは思わず両手をさすりながら呟いていた。
「なんて寒いんだ……、そうだ、今夜はどうしよう……」
 ヒッチハイクのトラックから降り立った街は、ぼくには生まれて始めて見る景色だ。
 そこは全く馴染みのない初めての土地だったから、それこそ西も東もわからない。
 ぼんやりと街の様子を眺めていると、綿の切れ端みたいな大きな雪のかけらが幾つも降ってくるのが見えた。
「あ、雪か……。これじゃ野宿は無理っぽいな」
 ぼくは半ば絶望して空を見上げた。「そんなことしたら死んじゃうかもな」
 まあ死んじゃってもいいんだけどさ――、そんな考えが浮かび、自嘲気味に笑う。
 ぼくは自分の生まれた町から逃げてきた。できるだけ遠くへ行ってしまいたい……、そう思って逃げてきたのだ。これから先、行くあてなんてないし、なんの希望も持ち合わせてはいなかった。ただ一歩でも遠くへ、ぼくを知ってる奴のいない所へ行ってしまう事――、それだけがぼくの本当の願いだったのだ。
 だからこの見知らぬ街で凍え死んでしまっても、それほど願ってたことから、かけ離れているわけじゃない。
 グーゥ……。
 情けない音をたてて、お腹が鳴った。
 ずっと今まで、トラックの助手席で膝を抱えて座ってたから、それほど空腹を感じなかったけど、どうやら自分の足で立ってると違うらしい。頭の中では深刻なことを思ってても、身体は正直らしい――、そう思うと少し笑えてしまう。
 とても食事なんて言えた代物ではなかったけど朝に少し食べたきりで、それから何も口にしてない。それ以外はトラックが立ち寄ったサービスエリアのトイレで水を飲んだだけだ。旅を続けるには、できるだけお金は節約しなきゃ――、って思うけど、背に腹は代えられない。たしか財布の中には、千円札がまだ何枚かあったはずだ。
「まだもう少し遠くへ行けるな、これだけあれば……」
 ぼくは財布の中身をぼんやりと思った。
 とりあえず、いま必要なのは今夜の食べ物と寝る場所だ――、ぼくはそう思いながら、重い足を引きずるようにして歩き出す。そんなぼくを見送るように空を無数の雪片が舞っていた。

《続く》






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