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南十字に続く道(15) 


「……だな、なかなかいいと思うよ。もう少しまとめてみて」
「はい、委員長」
 定期テストも終わり、図書委員会では展示物の製作作業にとりかかっていた。もっとも開館時間中には作業できないから、閉館後の五時から六時まで――、ぼくらはそれを決めて少しずつ作業を進めていた。
 今は、一年生たちが分担してまとめている各場面の要約に目を通しながら、指示を出していたところだ。
「委員長、ちょっといいです?」
 ぼくは今井の声に、顔を上げた。
「どうした?」
「アルビレオ、完成しましたよ。見てもらおうと思いまして」
 ぼくは今井のところまで、走っていった。もし今が開館時間中だったら、走るなんて論外だ。でも今は気心の知れた委員会の連中だけしかいないから、走っても誰も眉を顰めたりしない。
「へえ、綺麗だな!」
 ぼくはダンボール剥き出しの粗末な筒から中を覗いて、感嘆の声を上げた。「すごいよ、今井! そのままだな!」
 ぼんやりと光る大小二個の球体が視野の中に浮かんでいた。作中では『トパーズとサファイアの大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました……』とある。まさにそのままで、ふたつの光る球体が、少しづつ位相を変えながら、視野の中で回りあっていた。
 もっとも『観測装置』のラフは見せてもらっていたから、それが『観測装置』だとわかったけど、何も知らなかったら得体の知れない物体にしか見えない。
「あとは外装をソレっぽくすれば完成です」
「うん、そうだな……、みんなに見せてもいいかい」
「もちろん、大丈夫です」
 今井は自慢気に胸を張って答えた。
「おーい、みんな」
 ぼくは大声を上げた。「こっち来てみてよ、凄いから!」
 その声に全員が驚いて顔を上げた。
 カウンターの中で少し残っていた図書室の作業をやってもらっていた斉藤女史だけが、少しきつい目でぼくを見たけど、それでも渋々という感じでもなく立ち上がると、ぼくら二人のほうへ早足で歩いてくる。
「斉藤さん、見てご覧よ」
 ぼくは斉藤に場所を譲った。
「へー、すごい」
 思ったとおり、感嘆の声が上がった。
 今井の様子を見ると照れくさそうに、鼻の頭を掻いている。
「アルビレオみたい」
 と、斉藤。
「アルビレオだからさ、そりゃ……」
 うっそりと今井が呟いた。
 その声が聞こえたのか、いつもはニコリともしない斉藤が珍しく笑い声を上げた。


《続く》


以前に撮影した画像がありましたので載せてみます。
作中のアルビレオは左上の矢印の先の星で
肉眼で眺めても目立たない3等星ですけど、望遠鏡で見ると綺麗な二重星で、トパーズとサファイア色の星が並んで見えます。

はくちょう座

ちなみに星座絵の白鳥座は下のような感じで、白鳥の頭の部分がアルビレオです。西に沈む時は頭から沈んでいき、十字架のように見えます。南天の星座「南十字」に対して「北十字」と呼ばれることもあります。

星図

蛇足な話で失礼しました m(._.*)mペコッ

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