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厄介事は突然やってくる(9) 


 そして今日は、ミヤモトくんと約束した水曜日。
 うちの学校では定期テストの一週間前から部活は例外なく一律に禁止ってことになっている。だから最後の授業が終わると、掃除当番とかは別にして、いっせいに学校を出ていく。
 そんな校門から吐き出される制服の群れの中に、ぼくもいた。学校から直接ミヤモトくんの家に行くと目立ってしまうと思ったから、一度、自分の家に帰ってから行くつもりで、ぼくにしては珍しく、わき目もふらずに早足で歩いていたのだ。
「うーん、このままじゃ、ちょっと汗臭いよなあ」
 夏服の半そでの襟元に鼻を寄せて、犬みたいにクンクンって匂いを嗅いでみる。今日は蒸し暑いのに体育の授業で汗かいたからだ――、そう思いながら、ぼくは顔を顰めた。
「そうだ、家に帰ったらシャワーとかしよう」
 ぼくは歩きながら呟いた。
 もちろん、そんなことをしてたら、ミヤモトくんのところに行くのが少し遅れてしまう。でもさっぱりしてから行きたかったのだ。今だって、かなり暑い。温度はそれほどでもないかもしれないけど、蒸し暑さがたまらない。ぼくの家からだと自転車で十五分くらい漕くことになるから、シャワーしたって途中で汗をかいてしまうだろうけど、とにかく今のままで行くには気がひけた。
 こんな時、きっと女の子だったら勝負下着とかなんだろうな――、そんな考えが唐突に頭に浮かぶ。
 もちろん勝負下着なんて言っても話に聞いてるだけで、実際どんな感じなのか判らないし、もちろんそんな特別な下着なんて持ってない。
 それに下着姿になるような、あるいは身体に触れられるような、そんな展開になるとも限らないのだ。だけどミヤモトくんに迫られたら、きっと拒まないだろうなあ――、なんて思うと、自分でも顔が赤らんでしまうのがわかるし、動悸も急に早くなってくる。そりゃ、初めてだから怖いけど、でも彼だったら――、そこまで連想して、ぼくは我にかえった。
「あはは……」
 自分の想像に呆れてしまい、照れ隠しに苦笑しながら、自分の頭を指先でゴシゴシと掻いた。もう想像なんかじゃない、そこまでいくと単なる妄想の領域だ。
「いったい何を考えてるんだ、このバカは」
 小声で自分を叱りつける。そして顔を上げて驚いた。
 いつの間にか、もう自分の家が見えるところまで来ていたのだ。
 歩きながらぶつぶつ喋ったり、一人で勝手に赤くなったり、傍から観察している奴がいたとしたら、ぼくの挙動は、かなり変だったに違いない。ぼくの頭の中は妄想だけでいっぱいで、もうほとんど自動的に足を動かして上の空で歩いていたから、家の近くまで来ていることに気づかなかったのだ。
「とにかく急がなくちゃ」
 ぼくは家を目指して、照れ隠しもあったけど、小走りに駆け出した。


《続く》




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