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同じ星のふたり(7) 


 徹の部屋は二階だ。
 階段を上っていく途中、かすかに冷蔵庫を開く音が聞こえてくる。
 きっと飲み物とか物色しているのだ。そんなことを思いながら、ぼくは徹の部屋に入り、暗い部屋を慣れた手つきで照明のスイッチを入れた。
 徹の部屋はいつもと変わりない。
 ぼくにとっても適度に散らかった心地よい雰囲気だったりする。エアコンのリモコンはいつも通りの場所にあったし、パソコンの電源を入れて、起動画面が現れるのを待つ。それ以上することはなくて、ぼくはベットの上に身を投げて大の字になって寝そべった。
 目を閉じて大きく深呼吸する。
 徹の匂いがした。
「静かだな……」
 聞こえるのはパソコンから響いてくる低いファンの音とエアコンの動作音、ほんの時々、遠くから聞こえてくる自動車の音だけだ。
 目を閉じていると、別の感覚は敏感になるのかもしれない。部屋にこもっている、かすかな徹の匂い――、それはたぶん汗と体臭なんだろうけど、それが妙に気になってしまう。もちろんそれは、ぼくにとってイヤな匂いじゃない。だけど今は徹の気配だけは充分に部屋に満ちてるのに、その存在が間近に感じられないから、ぼくには人恋しさを倍加させるような、妙に切ない匂いだ。
「遅いな、徹のやつ……。なにやってるんだろ」
 ぼくの低いつぶやき声が、一人でいると耐え難いほど広く感じる部屋の中へ吸い込まれるように消えていった。
 やがて階段を上ってくる足音が聞こえてくる。
 それは徹に違いない。けれど起き上がるのが億劫だったから、ぼくは目を閉じて寝そべったまま、あいつが来るのを待っていた。
「なんだ、寝てるのか」
 ドアが開き、少し遠慮気味に徹の声が響いた。ぼくは、のろのろと起き上がった。
「ううん、起きてるよ。でも待ちくたびれた」
 ほんの少しだけ皮肉を滲ませて答える。
「ごめん、いいのがあったら」
 そう謝りながら、徹は椅子を引き出すと、持ってきたお盆をその上に置いた。
 そこには水滴の汗をかいたコップが二つ並んでいて、コップの中には氷と茶色い液体が満たされているのが見えた。「ほら、これを飲ませてやろうと思ってさ。去年作った梅酒だけど、もう飲めるってさ、母さんが」
「わあ、好きなんだ! おばさんの梅酒」
 ぼくは歓声をあげた。
「だろ」
 ぼくは小さなころから大好きだったのだ、徹の家の梅酒が。
 それは甘くて凄く濃厚だったから。自慢気におばさんがホワイトリカーの代わりにブランディで作ってるって言っていたのを思い出す。もちろん水で薄めて飲むのだけど、小さな頃は少しだけ――それも極端に薄めたものしか飲ませてくれなかったから、少し悔しくすら思っていたのだ。
 ぼくはコップを手にとった。
 冷たい水の雫がぼくの手を濡らしたけど、まったく気にならない。口元に近づけると甘い香りが漂っている。たまらずに口の中に一気に注ぎ込んだ。あとに残った氷がカラカラと乾いた涼しげな音をたてている。
「ああ、美味しいっ!」
 コップをお盆に戻し、手で口を拭う。
「母さんが去年のは出来がいいってさ」
 まるで自分のことみたいに徹の口調は自慢気だ。
「うん、最高だね、美味しいよ、これ」
「それじゃ、お待ちかねの鑑賞会を始めるか。涼は暗いほうがよかったよな」
 ぼくは黙って頷いた。
 徹は再び立ち上がるとドアの鍵をかけてから明かりを消し、それから部屋を横切って窓のカーテンを閉めた。薄いカーテンだから暗いといっても部屋の中は、せいぜい薄暗い程度だ。
 だけどカーテンの閉まる音を聞いただけで、なんだか秘密めいて、ぼくの胸の鼓動は高鳴ってくる。パソコンにメモリを差し込むと自動的に動画の再生が始まった。それを確認してから徹は戻ってきて、ぼくと並んでベットに腰を下ろした。
 そして持ってきたテッシュの箱をぼくらの間に、そっと置く。
 映像は英語で書かれた警告に始まり、画面が切り替わると豪華な白亜の邸宅が映し出された。緩やかな優雅な弧を描く階段を降りてきたのは、すらりと痩せたプロポーションのいい肉感的な美人で、胸元が大きく開いた薄いドレスを着ている。今にも大きな豊かな胸がドレスからこぼれそうだった。そしてさらに画面が替わった。舌を絡ませあうような長い濃厚なキスのあと、女は男の足元に蹲って、怒張して屹立したアレを口に含み、愛撫を加え始めた――


《続く》


次回はR18描写がありますので、ご注意ください。

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