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【冬企画参加】冬の宝物(01) 



「何を見てるかと思ったら、時刻表だったのか」
「あっ、うん……」
 不意を突かれて、ドキマキしながら僕は顔を上げた。「そ、そうだよ」
 聡は僕の驚いた様子には完全に無頓着な様子だ。僕の肩越しに首を突っ込んで、僕の手元を覗き込む。僕は時刻表を読み解く事に集中してたから、後ろから聡が近づいて来た事なんて全く気づかなかったのだ。
「なんだ、ホームシックか」
 少し意地悪そうな口調で聡は言った。
 でも全然、その横顔は意地悪そうには見えない。目が優しく笑っていたからだ。
「そんなんじゃないってば」
 でもそんな優しい聡の目には気づかないフリをして、僕は口を尖らせた。ちょっとした駆け引き気分。「いつ頃までこっちに居られるか、調べてたんだ」
「そうか、明日には帰るんだもんな……」
 聡の言葉から急に力が無くなった。
 きっと明日の事を考えたに違いない、僕は咄嗟にそう思った。僕も明日の頃を思うと辛い気持ちが沸き起こってくるからだ。
 明日になったら僕たちは一緒にいられなくなってしまう。だから出来るだけ長く――、それこそ一分でも長く一緒にいたい、そう思いながら僕は時刻表を調べていたのだ。だから絶対に、聡が冗談で言ったみたいなホームシックなんかじゃない。
「雪は大丈夫かな」
 僕は窓を見た。暗いだけで何も見えない。
 一日中ストーブをつけ、空気が乾かないようにヤカンを載せてあったから窓ガラスは汗をかいたみたいに濡れている。
「ああ、止んでたぞ、さっき見てきた」
「そっか……」
 少しガッカリしながら僕は答えた。
 まだ雪が降り続いていたら帰らなくていいかもしれない、そう思ったからだ。


 僕は冬休みを利用して聡の家に遊びに来ていた。
 僕たち二人は幼馴染だ。聡の家は近所だったから小さな頃からズッと一緒だった。それに家族ぐるみの付き合いだったから、僕は聡のおじさんやおばさんとも仲良しだ。だけどおじさんの仕事の都合で、夏休みとか冬休み、そんな長期の休みでなきゃ会えない場所に聡は引っ越してしまったのだ。
 冬休みが始まると、僕は聡の元に向かった。
 もちろん家出なんかじゃない。ちゃんと自分の親も、もちろん聡の両親だって知っている。うちの母さんなんて、お土産を山のように持たせて見送ってくれたのだ。朝早く地元の駅から出発し、新幹線に乗り換えて、更にローカル線の列車を乗り継いで、ほとんど一日中、電車に乗っていたような長旅だった。
 駅をひとつ通過するたび、僕は聡にメールを送った。少しずつ聡の元に近づいて行くのが嬉しかったからだ。その思いを聡と分け合いたかったから、僕は嬉々としてしてメールを送り続けた。
 でも明日、その逆のことが起きるのだ。
 それを思うと気が重かった。駅を通過するたびに――、二人の距離がどんどん離れていくたびに、きっと心が潰れてしまうような、そんな気がする。


「ほら、これを着ろ」
「わっ!」
 僕は驚いて、思わず頓狂な声を上げた。
 明日の事を考えてボンヤリしていたら、聡の声と一緒に、いきなり頭の上から上着が降ってきたのだ。「な、なんだよ!」
「早くしろ、出かけるぞ。外は寒いからな、覚悟しとけ」
「出かけるって、どこに行くんだよ?」
「いいから黙ってついて来い」
 聡はいつも強引だ。その上、ぶっきら棒な性格だから、いつだって説明なしだ。
 何が何だか訳が判らないうちに、色んな場所に連れてかれた事が何度もあった。そんな時、もし漫画だったら、頭の上に疑問符を幾つも浮かべて歩いている感じだ。もっとも聡は優しいし、僕の為にならない事なんて絶対しないから、いつも安心して後ろからついて行くんだけど――。
 僕はダブダブの聡の上着に袖を通しながら慌てて立ち上がり、聡の大きな背中を追いかけて歩き出す。ほんの微かな聡の匂いにうっとりしていた。


《続く》


冬の宝物
「BL観潮楼・冬企画「冬の宝物」参加作品です。





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