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サーカス(01) 


 ここはアーケードに天井を覆われた駅前に続く商店街。
 もう夕暮れが近く、人通りが多かった。
 帰宅途中の高校生らしい学生服の若者たちと、買い物かごを手にした主婦の群れの姿が特に目立つ、あとは商店街で働く人たちの姿だ。その人たちの威勢のいい声がアーケードの街に響いていた。そしてどこの店からか、揚げ物の香ばしい匂いが漂っている。その匂いを嗅いでいるだけで、お腹の虫が鳴き出しそうだ。

 雑踏を強引に分けるようにして、子供達の一団が走ってきた。
 先頭を走るのは、仲好しのさっちゃんだ。そのあとに、しんちゃん、ひでくん、としおくんが続いた。「わーい、ねー、たかしくんも行こうよ」
「こんにちは、さっちゃん」
 頭の上で母さんの声がした。「今ね、たかしは買い物の途中なの。また今度ね」
「ねー、おばちゃん、サーカスなの! 早く行かないと行列が行っちゃうから! たかしくんも一緒に見に行こうよ」
「サーカス?」
 ぼくは自分の手をひいている母さんを見上げた。
 そして母さんと目が合うと、ぼくは急かすように喋りだすのだ。「ねえ、行ってもいい? ぼくも行ってもいいよね?」
 少し考えるふりをしてから母さんは頷いた。「暗くなる前に帰ってくるのよ」
「はーい」
 大声で返事をして、ほかの子供たちに混じって、ぼくも駆け出した。
 サーカスのパレードを見るのは初めてだ。
 鮮やかな色のツギハギの服を着たピエロ、檻の中の猛獣たちと、傍らを進む長いムチを持った猛獣使い、のしのしと練り歩くゾウ、そのゾウの上の綺麗なお姉さんはダンサーたちだ……、次々と賑やかな音楽に合わせて通り過ぎていく。
「すごいねえ」
 ぼくは道端のガードレールにしがみつき、足をぶらぶらさせながら、さっちゃんに話しかけた。
 しかし返事はない。
「あれ、さっちゃん?」
 いつまにか、その姿がなくなっていた。
 いや、さっちゃんだけじゃない。パレードを見ようとする大勢の人混みの中に、小さな仲間たちの姿だけが見えなくなっている。
「うーん、どこ行っちゃたんだろう……。まあ、いいか。こんなの見たことないや、後で自慢してやるんだから、さっちゃんたちにさ」
 ぼくは、すっかりパレードに魅了されてしまってた。
 賑やかに通り過ぎていく、華やかな一団に。それは夢みたいな行列だったのだ。
「はい、ぼく」
 と、綺麗なお姉さんがチラシを手渡してくれた。「見に来てね」
「うん! 絶対、見に行くよ」
 そのお姉さんを最後にパレードは、通り過ぎて行った。
 ぼくはガードレールをくぐり抜けた。
 パレードを追いかけて駆け出す。いつのまにか、どこで合流したのか、目の前にさっちゃんの姿があった。道端を二人で、笑いながら一緒に走っていく。サーカスの行列を追いかれて。
「たかし、ついていっちゃダメよ。戻っておいで」
 遥か後ろから、ずっと遠くから母親の声がした気がする。
 ぼくは立ち止まり振り返った――。



《続く》





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