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瘴気沼奇譚(08) 


 掌を通じて、ゴタの温もりや脈動、血の流れが伝わってくる。
 それが生きているものの証なのだ。
 そして――、その感情も。
 これこそがナージの秘密だった。
 無論、そのことは誰にも話したこともない。そんなことが知れたら、それこそ誰もがナージを拒むに違いなかったからだ。触れた掌を通じて、相手の感情が流れ込むように伝わってくる。
 それは大まかな漠然としたイメージのときもあれば、自身に語りかけるような言葉のときもある。それは意志の強さによるものか、あるいはナージとの相性なのかは、ナージにはわからない。だが病人の嘘偽りのない気持ちを大まかにでも知ることができれば――痛み苦しみ悩みなど――、病人の世話や治療には、どんな言葉より、どんな書物よりも役立つのだ。
「ここが苦しいのだな」
 ゴタの右胸に触れたまま、ナージは静かに問うた。
 その目は深いフードの奥からゴタの顔に注意深く注がれたままた。「かなり長い間――、そうだな、もう何年も痛みを隠してきたのだのだろう、違うか」
「そうだ」
 ゴタの皺深い顔が僅かに曇った。
 それは見落としそうな小さな変化でしかなかったが、それを見届けてから、ようやくナージはゴタの顔から目を離した。
「もう服を戻してもいいぞ。少し待ってくれ、痛みを抑える薬を渡そう」
 それだけ言うと、ナージはゴタに背を向けた。
 持ってきた大きな背負いの上に背を屈め、手馴れた手つきで荷を解きにかかる。
「なあ、教えてくれ。どれだけ生きられる」
 ゴタの低い声が静かに響いた。
 ゴダに背中越しに問いかけられて、一瞬、ナージは動きを止めた。ゴタの言葉は、とても気安い――、まるで今夜の夕食の内容でも問うかのような口調だったのだ。


<<続く>>




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