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黒き輪廻、蒼天の輪舞(04) 


 窓一つ無い部屋を搖れるランプの光が照らし出していた。獣油の焦げる嫌な臭いがランプから微かに立ち上っている。そこは宮殿の地下の奥深くにある小部屋だった。
 粗く無骨な石壁が四方を塞ぎ、じめじめとした湿った空気が重く澱んでいる。この地に宮殿が築かれて以来、幾年にも渡って身分ある者の幽閉に使われてきた部屋だった。この部屋に入れられた後、生きて出た者はごく少ない。
 その殺風景な壁には宮殿の一室らしいと知れるような豪奢な装飾は何もない。その代わりに、あちこちに刻まれた無数の刻字が残されていた。この国の歴史を知る者が見れば、それが幽閉された人々が刻みこんだものだとわかっただろう。自らの運命をせめて後世に伝えたい――、部屋の澱んだ空気は、無数の幽閉された人々の呪詛と絶望と血を、そのまま含んだ重いものだったのだ。
 粗末な祭壇が壁ぎわに作られてあり、それは異端的な禍々しい雰囲気を漂わせていた。よく見れば祭壇と、その周囲の床は、赤黒いシミに染まっている。
 それは明らかに血の痕跡だ。
 祭壇の上に目を移せば、供えられた奇妙な形をした炉の中で、燃えつきようとしている最後の炎が弱々しくチラチラと青い舌を伸ばしている。その炉からは何とも形容し難い匂いを発する薄い煙が立ち上っていた。
 奇妙な禍々しい祭壇の反対側の壁際には石造りの階段が天井まで届き、その先は闇の中へと消えている。
 その階段を二つの人影が降りてきたのは、つい先刻だった。そして、その二人を丁寧に迎え入れた人影が一つ。
 やがて三つの影は祭壇の前に立った。
 重い沈黙が密室を満たした。
 仄暗く揺れるランプの炎、炉の弱々しい炎、それらが微かに搖れるたびに壁に投げかけられた影は、大きく幾重にも揺らめき、まるで奇怪な踊りを踊っているように見える。

 一人が息苦しい沈黙を破り、最初からそこにいた小さな人影に話しかけた。
「それで呪法は完成したのだな。ルー=ニルゲ」
 それは太く重々しい声だった。
 自信に溢れ、命令を下すことに慣れた威圧的な口調。同じ声を反感を持つ者が聞けば、傲慢で尊大な口調と聞こえただろう。
 声の主の容貌は整端な顔立ちで、物腰にも高貴さが感じられた。
 しかし男の顔には、作りものめいた張り付いたような薄い笑いのほか、なんら明瞭な表情が浮かんではいない。それが男に近寄りがたい冷酷そうな印象を与え、また男の血管の浮いた二つの目は、獣めいた強い光をたたえており、それが冷たい印象を更に強める働きをしている。
 金糸の刺繍をほどこした紅の上着が弱々しい照明の下では、不吉な赤黒い血の色に染まっているように見えている。まるで男の全身から禍々しい血の香が立ち昇っているかのようだ。

<<続く>>




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